Global Insight

グローバル・インサイト

Global Insight Vol.63

日付2022/10/13

オーストラリア

 

【各種法律アップデートの概要】

オーストラリアの会計年度は7-6 月となり、新年度の7 月より適用となる各種法律アップデートの概要をご説明します。


1. 最低賃金引上げ
セーフティネットの役目となるNational Minimum Wage による最低賃金と業種・業界別に定められたアワードによる最低賃金があり、基本的にはアワードによる最低賃金が適用されます。
アワードは全ての業界に対して存在するものではないため、該当するアワードがない場合はNational Minimum Wage が適用されます。
National Minimum Wage は主に物価上昇率をベースに毎年見直しが行われ、今年もその結果、2022 年7 月1 日より前年度比で5.16%上昇しました。


最低賃金の上昇は給与の支払い期間すべてが7 月1 日以降となる給与より適用となり、以下のような場合は上昇前の賃金が適用されます。
例1. 6 月1 日~ 30 日期間の給与を7 月に支払い
例2. 6 月27 日~ 7 月3 日の期間の給与を7 月に支払い


なお、アワードは業種や経験により最低賃金が異なるため、アワードによる最低賃金もNational Minimum Wage の決定をもとにそれぞれ見直しが行われています。これらを適用している企業については最低賃金を個別に確認する必要があります。

2. Superannuation レートの引き上げ、および$450 リミットの廃止
当初より発表されていた2025 年度までにSuperannuation のレートを12% まで引き上げる方針通り、2022 年7 月1 日より支払われる給与に対して積み立てるSuperannuation が10% から10.5% へと0.5% 引き上げられました。
こちらは上記最低賃金の適用期間と異なり、22 年7 月以降に支払われる給与(給与支払い期間に関係なく)より適用となります。

また22 年7 月1 日以降、従業員の給与はAUD1 からSuperannuation の支払い義務が発生します。
(22 年6 月30 日以前は給与額が月額AUD450 未満の場合はSuperannuation の支払い義務はありませんでした。)


3. 特定目的財務諸表の廃止
オーストラリアではReporting Entity の概念を廃止し、特定目的財務諸表を作成していた営利企業は2021 年7 月より開始する会計年度より一般目的財務諸表の作成が義務となります。
現在特定目的財務諸表を作成している営利企業は今後一般目的財務諸表の作成が必要になり、今後多くの対応を迫られる可能性があるので、事前に確認が必要です。

今回の改定において影響を受ける企業は、大規模非公開会社や外国支配企業など、過去オーストラリアにおいてReporting entity ではないと判断され、現在特定目的財務諸表を作成している企業となります。
大規模非公開会社は以下の要件二点を満たしいてる会社となります。


① 連結収益: AUD50m 以上
② 連結総資産:AUD250m 以上
③ 従業員数: 100 名以上(会計年度終了時)


特定目的財務諸表から一般目的財務諸表への意向はTier 1 もしくはTier 2 に移行するのかにわかれますが、Tier1 は公開会社に求められる開示水準となるため、特別な理由がない限りはTier2 へ移行することなります。


Tier 1: 会計基準で要求されるすべての認識、測定、開示基準を満たしているもの
Tier 2: 認識、測定はTier 1 と同様であるが、開示情報は簡素化されたもの


特定目的財務諸表から一般目的財務諸表の移行については以下のような追加情報を開示することになります。
法人税 、関連会社間取引、その他情報の開示が必要であると考えられる情報など過去オーストラリアの会計基準に基づいた認識や測定の要求を満たしている場合は、原則追加開示情報をするのみとなりますが、それらの要求を満たしてない場合などは、多くの時間と労力がかかる可能性があるので、事前に確認を行い余裕をもって対応することが必要になります。



※本⽂より⼀部抜粋
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